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第16回「身近なポスターの魅力2」

今回も私のポスター・コレクションの数々を紹介して、皆さんに改めてポスターの魅力に気付いてもらおうと思います。

前回は優れたイラストレーションを使った身近なポスターばかりを紹介しましたが、今回は写真を使ったユニークなものも一部登場します。

そして巨大なサイズのものや珍しい組ポスターもお見せします。

最初は新幹線のポスターです。(写真1)

写真1 世界最速増発

どうです、スピード感があってかっこいいでしょう!
『世界最速増発』というキャッチコピーもインパクトがありますね。
デザイナーが文字をドーンと大きく扱ったのも分かる気がします。
一見写真のようですが、リアルに描かれたイラストレーションです。

ちなみに一台だけ停車している新幹線があります。部分図で確認してください。(写真2)

写真2 世界最速・部分

これがあるために他の新幹線が猛スピードで走っている感じがより強調されるのです。

このポスターは新幹線を真横から捉えていますが、正面から捉えて描いたヴァージョンもあります。(写真3)

写真3 WELCOME

『WELCOME』と題されたこのポスター、幻想的で圧巻な印象ですが、同じ作者の手になるものと思われます。
鉄道ファン、新幹線ファンならよだれを垂らす一枚ではないでしょうか。
私もこのポスターに出会った時の感動は忘れられません!
そしてこのポスターは、大きさが縦103㎝、横146㎝というビッグサイズなのです。
駅などでよく見かけるB2のポスターはサイズが縦73㎝、横51.5㎝ですから、4倍です。
このサイズだと生活空間には飾るスペースがないですね。

写真4 グルカ

大きいと言えば高島屋の商品宣伝ポスター『グルカ』もなかなかのものです。(写真4)

縦88㎝、横141㎝あります。

このポスターはバッグのブランド・メーカーの宣伝ですが、クラシックな雰囲気の男女を描いたイラストレーションが、映画のワンシーンのような格調高い雰囲気を醸し出しています。

部分図でそのテイストを味わってください。(写真5,6)

写真5 グルカ部分1
写真6 グルカ部分2

次は写真を使ったポスターです。

普通写真を使ったポスターにはあまり目を留めない私ですが、以下の2枚には思わず笑ってしまいました。まずは『オフピーク通勤』。(写真7)

写真7 オフピーク通勤

通勤混雑緩和の時差通勤を訴えたこのポスター、キャラクターに有名人ではなく、宇宙人のウルトラマンを起用したセンスが光っています。
それもドアップです!
これはつい足を止めてしまうでしょう。
ただしあの仮面からは表情が見えないので、「笑顔」かどうかは疑問ですが(笑)。

もう一枚は、2010年に岡山県で開かれた『国民文化祭』のポスター。(写真8)

写真8 国民文化祭・岡山

岡山の名産と言えば「白桃」ですから、それをドーンと配したわけです。
でもこのポスター、私にはむき出しのきれいな「おしり」にしか見えないんですよね(笑)。

よくこんな大胆なデザイン案が最終審査に通ったなというのが、私の率直な感想です。

そしてこのポスターの作者は、もしかしたらマン・レイという画家が1932年に描いた《天文台の時-恋人たち-》という絵を意識したのかなとも思いました。(写真8)

写真9マン・レイ

肉体の一部(桃をおしりに見立てたとして)を大きく空に浮かべ、その大きさを強調するために、地平線上に自然の風景を配した構図など良く似ていると思いませんか。

ところで皆さんは組ポスターというものがあるのをご存知でしたか。

内容をより効果的に伝えるために、一枚ではなく複数枚で構成されたポスターのことです。
費用もかかるだろうし、貼るのも大変と思うのですが、たまに見かけた時は嬉しくもなります。
かつてポスターは「街角の芸術」と呼ばれていましたが、組ポスターの傑作はまさに街角や駅を彩る芸術品です。
今回は取っておきの2組を紹介します。

一つ目は『世界卓球選手権』のポスター。(写真10、11)

写真11 世界卓球選手権・雷神
写真10 世界卓球選手権・風神

これは名画のパロディによるもので、原画は前回も登場した俵屋宗達の《風神・雷神図》です。

あのキャラクターはやはり使いたくなりますよね。

部分図でよく見ると風神、雷神が手に卓球のラケットを持っている。(写真12,13)

写真13 雷神・部分
写真12 風神・部分

「やられた!」という感じですね。こういうユーモアやウィットこそポスターには必要だと思います。
このポスターを駅のホームで見かけた時は、すぐに主催事務局へ電話したものです。
ポスターには掲示期間という賞味期限がありますから、「善は急げ」なのです。
何しろ掲示期間が過ぎれば燃やされる運命ですから、気にいった人が救ってあげなければ。

次の組ポスターも一目見て気に入り、ゲットするためにすぐ電話を入れました。
「美術の教員ですが、鑑賞の授業に使いたいので」と言えば、よほど気難しい相手でなければ了承してくれます。
その時に「折らないで送ってもらえますか」の念押しが大事です。

このポスターは『富山県の観光ポスター」ですが、一枚では良く分かりません。
地図の一部しか描かれていないからです。(写真14)

写真14 生き生き富山1

それが一枚さらに一枚と左につなげていくと、なんと5枚並べた時に富山県の地図の全体が姿を表すのです。(写真15)

生き生き富山(クリックで大きな画面を表示)

とかく東京中心に回っている日本では、地方がアピールするのは大変です。
そんな中で大自然の豊かさを地図でアピールしようとした富山県の心意気にエールを送りたいと思います。

ここまで優れたイラストレーションを使ったポスターを紹介してきましたが、最後はこの人のイラストレーションを使ったポスターを紹介しない訳には行きません。

その人の名はノーマン・ロックウェル。
“アメリカ人の心の故郷”と称される人気イラストレーターです。
大学時代にイラストレーションの通信講座を受講していた頃その存在を知り、近年は私の鑑賞授業の作品の読み解きに欠かすことのできない作家です。

ロックウェルの展覧会ポスターであれば、それほどレア-ではありませんが、私が手に入れたのは岡山天満屋というデパートのクリスマス商戦のポスターだから貴重なのです。(写真16)

写真16 クリスマス アットホーム

出会いは岡山空港。羽田からの帰りの便を降りて、連絡通路を歩いている時に偶然見つけたのです。
翌日すぐに天満屋に電話し、美術部の方からプレゼントしていただきました。こういうことがあると本当に幸せ気分です。

この絵の読み解きに皆さんもぜひ挑戦してみてください。
ポイントは
「描かれているのはどういう場面か」
「手前の児童は誰に向かって声を上げているのか」
「この絵の主役は誰か」
の三つです。

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