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Gallery -水無月-《六月の田園詩》

《六月の田園詩》

画像をクリックするとモニタのサイズに合わせて全体像が表示されます。

「六月の田園詩」

私は時々日本らしい風景が描きたくなります。
北海道に似た北ドイツのカラっとした風景も好きですが、
情緒豊かなしっとりとした日本の風景も好きです。
日本の風景はダイナミックさには欠けますが、
穏やかに見える風景の中に、
密度の高い複雑な変化を潜ませていて、
見ていて飽きることがありません。
そこへ四季の変化が加わると、
実に多様な姿が見られるようになるのです。
これまでそんな風景を求めて、
神奈川県伊勢原市や岡山県総社市の自然豊かな場所に長く住んで来ました。
私はもともと川瀬巴水のような“旅の画家”ではありませんから、
描きたい風景が近くにあることが住む条件としては大事で、
それがあるだけでそこに住んでいる価値や意味を見出してしまいます。
最近知ったことですが、伊勢原市と総社市は「防災姉妹都市」だそうです。
要するに何か自然災害があった時に、
助け合う仲だということです。
私がそれぞれの街で暮らしてきたことは全くの偶然ですが、
私も関東方面に何かあった時にはお役に立ちたいと思っています。

今回紹介するのは、
田植えの済んだ風景を描いた《六月の田園詩》、
縦15㎝、横40㎝のかなり横長の画面です。
場所は現在私が住んでいる総社市の桃山団地に近い作山古墳の真向かいにあります。
この風景の北側には国民宿舎のサンロード吉備路が、
東側には備中国分寺があります。
実はこの場所は、以前に紹介した《秋の杜》とほぼ同じです。
《秋の杜》では、この場所の左側に焦点を当てて、
雑木林の力強い紅葉と杜全体の生命力を主題にしました。
一方《六月の田園詩》ではこの場所の右側に焦点を当てて、
なだらかな丘の悠然さとその丘をおぼろげに映す水面の静けさを主題にしました。
このように日本の風景は同じ場所であっても季節によって全く異なる表情を見せてくれ、
私達に感動を与えてくれるのです。
他にも主題を変えてこの場所を描いた作品もあり、
これからもこの場所を季節や構図を変えて描くつもりですので、
今後の展開を楽しみにしていてください。

ところで、
近年はスパーリアルな絵画がちょっとしたブームで、
風景画の世界にもそのような傾向の絵を散見するようになりました。
しかしそれらの絵の中には、
精緻な描写を除くと画面から伝わってくるものがあまり感じられず、
この作者はこの風景の何に感動したのだろうか、
この風景からどんなメッセージを受け止めたのだろうかと、
つい考えてしまう作品もあります。
つまり造形に隠された「心」の部分の印象が希薄なのです。

私が好きな風景画家と言えば、
ロイスダール、フリードリヒ、コロ―、ベックリン、ホドラー、アンリ・ルソー、ボナール、ワイエスなどが挙げられますが、
彼らの絵からは様々なメッセージを受けとめることができます。
それぞれ絵のタイプは異なりますが、
共通して言えるのは、
画面に生命感や空気感があり、
時間の動きが感じられることです。
風景画は「心を映す鏡」であってほしいと思います。
そのためには、自然への畏怖と敬意、
同化と愛着の心を大事にし、
そして私の風景画を見た人の心が安らぎ、
元気になり、
自然や環境を大切する思いが湧き出るような絵を描きたいと思います。
《六月の田園詩》に描かれた風景の傍らを、
私は毎日のように車で走りながら、
何度も車を止めて眺め、味わっています。
皆さんにもそんな風景との出会いがあることを願っています。

泉谷 淑夫

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