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第55回『平塚での個展の思い出と15年ぶりの平塚での個展案内』

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今回は通常の『美術の散歩道』ではなく、15年ぶりの平塚での個展のご案内です。

個展 DM・2023秋

神奈川県伊勢原市に生まれ、高校時代を平塚江南高校で過ごし、
大学を出てから中学校の美術科教員として赴任したのが、平塚市立大住中学校で、
そこに2年間の大学院研修時代も含めると10年間在籍した関係で、
平塚は私にとって思い出深い場所のひとつとなりました。

今でも横浜髙島屋で個展をやると、高校時代の友人たちが駆けつけてくれます。
そして大住中学校時代の教え子たちもいつも私を応援してくれます。
ありがたいことです。

そんな平塚という場所で、私はこれまで5回個展を開きました。
場所はすべて平塚画廊です。

ここでの最初と2回目の個展では大きな成果を上げることはできませんでしたが、
私が岡山県に移住した後の3回目の個展は第10回の記念展ということもあり、
隣のビルにあったTギャラリーも会場にして行いましたが、これが大当たり!
大きな成果を上げることができました。
しかもその個展を見た横浜髙島屋の美術部の方が私をスカウトしてくれたのも、
この時の個展を見てでした。

その後は横浜髙島屋が2年おきに個展を企画してくれた関係で、
平塚画廊での個展は遠のきましたが、
オーナーの朏島さんという方が熱心に誘ってくれたおかげで、
第14回と第21回の個展を平塚画廊で何とか開くことができました。

平塚画廊は平塚駅の西口にあるビルの5階にあって、
立地条件は良くないのですが、不思議とお客さんはよく入り、
絵もよく売れ、14回展も21回展もほぼ完売という状況でした。
その21回展をやったのが2008年でしたので、平塚では15年ぶりの開催となるわけです。

しかし平塚画廊はかなり前に閉鎖されたので、今回の会場は元麻布ギャラリーという初めての会場です。

企画してくれたのは秋澤さんという、
以前平塚市にあったフクスケという店の画材担当として働いていた方です。
キャンバス、絵の具、額縁などの購入では、自宅まで届けていただいたこともしばしばです。
秋澤さんは私の描く田園風景に興味を持っていて、
昨年12月の横浜髙島屋の個展に顔を出された時に、正式なオファーを申し受けました。

その秋澤さんが企画した今回の個展のキャッチコピーが
「時空を超えて-至芸と神秘-」です。

この言葉が私に対する過大評価であることは承知の上で受け入れたのは、
自分では絶対付けないタイトルなので、
たまには人任せも新鮮でいいかなと思ったからです。

内容は秋澤さんの要望に従って、田園風景の小品が半分を占めます。
しかも急に入ってきた企画ですから旧作がメインです。
その関係で値段はかなりリーズナブルにしています。
しかし旧作とはいえ改めて見るとどれも味わい深く、今回どんな反応が見られるのか楽しみです。

出品作の中から5点を選んで紹介しましょう。

一つ目は秋澤さんがDMの絵として選んだ《田園の樹》です。(写真1)

写真1《田園の樹》 P4

総社市の一角にある田園地帯で見つけた一本の柿の樹が主役です。
この柿の樹はかなり気に入ったので、3回程絵にしています。
この絵では秋の豊かな実りを睥睨するような巨木として描いていますが、
実際はもう少し小ぶりです。
しかしたわわな葉ぶりは実際の印象を大事にしています。
また遠景の山並みも見どころのひとつです。

二つ目は《田園の空》です。(写真2)

写真2《田園の空》SM

畑に掘られた溝に雨水がたまって鏡となり、
秋の空を映しているという珍しい光景に感動して描いた一枚です。
大地と空が一体化したような爽快感を感じてもらえたら嬉しいです。

三つめは《春暁》です。(写真3)

写真3《春暁》 P4

春の明け方の光に包まれた数本の樹々と土手の雑草を描いたもので、
何とも言葉にならない空と大地の色彩が私自身はかなり気に入っています。
また丘の稜線を斜めに配した大胆な構図も、この絵を際立たせていると思います。

四つ目は《日暮れ道》です。

写真4《日暮れ道》F4

《春暁》に対して、こちらは春の黄昏時の風景です。
私は黄昏時の景色を描くのが好きで、
幅の狭い暗めの色調の中で対象を描き分けるのにやりがいを感じます。
この絵は私の好きな画家の一人であるミレーを意識して描いたものです。

五つ目は昨年の横浜髙島屋の個展にも出品した《レンゲの咲く頃》です。(写真5)

写真5《レンゲの咲く頃》 P3

場所は吉備路の一角で、実はコロナの時期にジムを休んでいた時に開拓した
ジョギングロードと周辺のこんもりした杜とレンゲ畑を描いたものです。
吉備路では毎年4月末にレンゲ祭りをやるので、その時期を想定して描いたものです。

残りの半分は羊の新作ですが、こちらもリメーク作品が多くなっています。

ただしどれも技術と工夫を凝らした小品ばかりですから、見応えは十分にあると思います。

こちらも5点紹介します。

一つ目は新作の《頂点》です。(写真6)

写真6《頂点》SM

三匹の若い羊が石柱の頂点を目指している図です。
一番上の羊は頂点に達し、
真ん中の羊はそれを追いかけ、
下の羊はこれからチャレンジしようとしています。

最近はスポーツの世界で日本人の若者の華々しい活躍がよく報じられますが、
応援している我々も元気づけられます。
そんな思いを託して描いた一枚です。

二つ目はリメーク作品の《昼の月》です。(写真7)

写真7《昼の月》SM

田園の牧歌的な情景で、子羊が母羊の乳を飲んでいる場面です。
母羊の慈愛に満ちた雰囲気を大事にした絵です。
そんな親子の円満な関係を昼の満月に象徴させてみました。
背景の2本のポプラもこの親子を表しています。

三つ目は新作の《悠々》です。(写真8)

写真8《悠々》ハガキ

この絵はハガキサイズのミニアチュールです。
高原の牧歌的な情景ですが、
くつろぐ子羊と高い空に浮かぶ一つの雲だけが道具立てという極めてシンプルな構図です。
シンプルですが子羊の生命感と大空の爽快感が感じられる力強い小品になったと思います。
子羊の幸せそうな表情がポイントです。

四つ目はリメーク作品の《約束》です。(写真9)

写真9《約束》12×15.5㎝

西日を受けて、二匹の若い羊がそろってこちらを見つめています。
2匹の絆を象徴するように大きなポプラがすっくと立ち、
穏やかな風に乗って赤い気球が空に浮かんでいます。
若い時の約束が果たされますようにという願いを込めて描きました。

この絵でもうひとつ見てもらいたいのは凝った祭壇額です。
この額は奈良の額職人・ガドロ氏の手になるもので、
私からの注文で造ってもらった一品ものです。

最後はアーチ形の祭壇額に入った新作《祝福の奇跡》です。(写真10、11)

写真10《祝福の奇跡》F3号
写真11 《祝福の奇跡》額無し

この絵では古代遺跡の石柱が、月の力で宙に浮き、
その上に乗った「選ばれし者」である若い羊を祝福するように夜の虹が架かっています。

この虹は「月虹」と呼ばれ、月の光によって生じる虹で、
見たものに幸せをもたらすという非常に縁起のいいものです。

地上では3匹の羊たちが若い羊を仰ぎ見ています。
この絵のイメージは、キリスト教絵画の有名な画題のひとつである「東方三博士の礼拝」を、
私の自由解釈によって羊の世界に置き換えて展開したものです。
「選ばれし者」を包む二つの気象の奇跡を部分図でもお楽しみください。(写真12)

出品作の約半分を紹介しましたが、
ぜひ元麻布ギャラリーの会場を訪れ、実作をご覧いただけますように期待しています。

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