1.変容
F100号(130.3×162.1cm)1975年
これは私の卒業制作で、大学時代のシュルレアリスム研究から生まれたものである。公害問題が豊かな物質文明を根底から揺さぶった当時の社会状況を背景に「将来の生命への不安」をテーマとして描いた。大学時代の私は美術教室では油絵を描かず、制作はより集中できる自宅で行っていた。指導教官の國領先生からは「もっと大学でも制作するように」との注意を受けたこともあったが結局この絵も下絵を最初にゼミで見せたほかは、ずっと自宅で描いていた。完成作を初めて卒展の会場で見た先生が「君の絵は大学では描けないね」と言ってこの絵の出来とともに制作姿勢を認めてくださったことが、今でも大切な思い出となっている。第11回神奈川県美術展 に出品したところ前年の特選に続いて準大賞を受賞できそれらの賞金で新婚旅行を兼ねた初のヨーロッパ美術館巡りを実現した。ちなみに1ドル360円(なんと今の三倍!)の時代である。
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