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画家・泉谷淑夫のオフィシャルサイト

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「雲海のランデ・ヴー」

Gallery暦 -文月- 2018

《雲海のランデ・ヴー》

画像をクリックするとモニタのサイズに合わせて全体像が表示されます。

7月と言えば七夕!ですが、
日本の伝統行事の割には、近年あまり騒がれず、
7月7日が淡々と過ぎて行くように感じているのは、私だけでしょうか?
幼稚園や保育園では、
今でも竹飾りに願い事の短冊を吊るして、七夕祭りを祝っていますが、
小学校以上になると、
学校行事に組み込んでいる例は、極端に少なくなります。
七夕伝説には、七夕の夜に織姫と彦星が、
年に一度のランデ・ヴーを果たすというラヴ・ロマンスも含まれていますから、
遠距離恋愛中のカップルには、
盛り上がれるまたとないチャンスのように思われますが、
最近の若者事情で、この辺りがどうなっているのかは不明です。

ところで、織姫にあたる星は琴座の恒星ベガで、
織女星とも呼ばれ、裁縫の仕事の神様として信仰されています。
これに対し彦星は鷲座の恒星アルタイルで、
牽牛星とも呼ばれ、農業の神様として信仰されています。
この二つの星が天の川をはさんで、最も輝いて見えるのが、
旧暦の7月7日(新暦では8月12日頃)、七夕の夜なのです。
中国ではこの日を「年に一度のめぐりあいの日」と考え、
七夕のストーリーが生まれたとのこと。
ちなみに琴座のベガと鷲座のアルタイルに白鳥座のデネブを加えると、
有名な「夏の大三角形」が出来上がります。
昔の人は想像力が豊かで、
夜空の星を見てたくさんの物語を創ってきたことを思う時、
今の私たちの想像力の貧困さを嫌でも感じないわけにはいきません。

私は元々恋愛を盛り上げたいタイプなので、
七夕のようなロマンティックな状況設定には、魅力を感じます。
そんな訳で、
私の絵の中にも七夕伝説に当てはまるような絵があるのです。
それが今回紹介する一枚、
その名も《雲海のランデ・ヴー》です。
もちろん描かれているのは、織姫と彦星ではなく、
二頭の羊たちです。
しかし私の描く羊たちは人間の置き換えですから、
思い入れは十分に可能です。
何しろ二頭の羊は、喜びに跳びはねながら、
互いを見つめ合っています。
場所は雲海の上、ということは宇宙の一角です。
時間は月光が照らす夜、天候はもちろん晴れです。
1年に1度の逢瀬の夜なら、せめて晴れていてほしい、
月が輝いていてほしい、と祝祭的願いを込めて描いたのかもしれません。

皆さん、この絵に描かれている二頭の羊の形を見てください!
何かに気付きませんか?
正確に言うなら、二頭の羊の組み合わせから生まれる形のことです。
そうですハート形になっているのです!
だからこの絵は「ランデ・ヴー」なのです。
細い三日月が向かい合った二頭の羊たちを支えています。
雲海の上でジャンプした羊たちは、
次の瞬間には違うポーズをしているはずですから、
ハート形は奇跡の瞬間でもあり、
年に1度のランデ・ヴーを象徴していることにもなります。
私は大作では、羊たちを厳しく困難な状況に置くことが多いのですが、
小品ではできるだけ幸福な状況の中に置きたいと考えて描いています。

最後にこの作品は、
自分用に描いた第2作目が、自宅のギャラリー入口に展示されていますので、
額の付いた状態を紹介して、終わりたいと思います。
ご覧ください。

額装

スゴイ額でしょう!
これはイタリア製のトンド(円形)額で、元々は鏡が入っていたものを絵画用に転用したのです。
絵に合っているかどうかは皆さんの判断におまかせしますが、
こんな派手な額も世の中にはあることを知ってもらいたく、紹介した次第です。

泉谷 淑夫

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