5月31日に神戸にあるBBプラザ美術館で私の講演会が開かれました。
岡山大学時代の大学院での教え子で、現在BBプラザ美術館の学芸員であるOさんからの依頼で実現したものです。Oさんは私の大学院での講義をよく覚えているだけでなく、当時授業で使っていたテキストや配布した資料なども保存してくれているありがたい教え子です。そんな縁で半年前にオファーが来て、引き受けることにしたのです。
準備の時間がたっぷりあったので、『絵画における青とモノクローム』というテーマに私なりにじっくり取り組むことができました。3月末にはおおよその内容は固まっていたのですが、4月29日の展覧会初日に会場を訪れ、展示作品を確認するとともに、講演会の会場も下見しました。それからの1か月でスライドショーのブラッシュアップに取り掛かり、講演会前日に準備が整いました。当日配布したレジュメに従って話の流れを紹介すると以下の通りです。

まずは自己紹介ということで、兵庫県とのご縁、近年の羊の大作、猫の絵の世界、名画のパロディなど自作を紹介。次に私の中の「青の世界」と「モノクロームの世界」を、具体例を挙げて考察。後半は西洋と日本の絵画史の中から印象的な「青とモノクローム」をピックアップ。

ジオットのスクロヴェーニ礼拝堂やラファエロの聖母マリアの「青」に対してブリューゲルやアングルのグリザイユ画の「モノクローム」、浮世絵の藍摺絵の「青」に対して雪舟、等伯、宗達の水墨画の「モノクローム」、ピカソの「青の時代」と東山魁夷の「青の風景」に対してカリエールの「母と子」やハマスホイの「ミステリアスな室内」の「モノクローム」、マルクの動物画やカンディンスキーの抽象画の「青」に対して藤田の「乳白色の肌」とピカソの《ゲルニカ》の「モノクローム」というように、「青とモノクローム」を対照させながら考察していきました。
結論としては「青とモノクローム」は見た目の印象とは別に、使用効果としては意外に近いものを持っているというものでした。そして最後は私ならではの締めくくりとして絵本を紹介。みやこしあきこさんの『たいふうがくる』は今回のテーマにぴったりの絵本でした。

当日の参会者は50名ほどでしたが、私の所属する一陽会関西支部の作家の方々や関西在住の知人などが応援に駆けつけて下さり、三分の一くらいが顔見知りでしたので、落ち着いて講演することができました。90分の間、私の話に目と耳を集中して傾けていただき、感謝に耐えません。

改めてご参会下さった皆様、ありがとうございました。以下に一部ですが事後のアンケートの自由記述の声を上げさせていただきます。
■青色がひっこむようにぬりなさいという言葉が心にしみました。今自分が描いている絵の中の青で苦労しており色々考えさせられました。
■とても勉強になりました。また聞きたい!と思える講演でした。この展覧会講演会を準備するのにとても大変だったと思います。この機会を作って頂きありがとうございました。
■久しぶりに大学のゼミの雰囲気を味わわせてもらいました。私たちの時代にはスクリーンと一緒に先生の話を聞くようなスタイルはありませんでした。美術の講義に最適ですね。内容も充実し、先生の生徒さんは本当に幸せですね。
■たくさんの作品と名画を先生の感性で鑑賞できる素晴らしい講演会でした。また泉谷先生で定期的に講演会を開いてほしい。
■青は最も好きな色なので青に対する理解が深まったと感じた。また仕事柄絵本に触れる機会が多いのでこれからは青とモノクロームの使われ方を注視したい。
■フリードリヒは好きな作家でしたが、東山魁夷に影響を与えていたなんて知りませんでした。
■泉谷先生の静かで豊かな語り口がハマスホイの作品のようでした。