YI

画家・泉谷淑夫のオフィシャルサイト

メニュー
top-img

第8回『美しい驚き・泉谷淑夫の世界』

企画展示の入り口

今回は、現在池田20世紀美術館で開かれている私の個展『美しい驚き・泉谷淑夫の世界』の話をしましょう。

池田20世紀美術館は日本で最初にできた現代美術館で、静岡県伊東市にあります。
大室山や一碧湖をはじめとする周囲の豊かな自然も魅力の一つで、年間に多くの観光客が訪れるリゾート型のミュージアムです。
池田20世紀美術館でこれまでに開かれた企画展招待作家のラインナップはそうそうたるたるもので、今回幸運にもその一員に加われたことは、私のキャリアにとっても、大きな意味を持ってくると思います。

画家には色々な夢があります。私の場合は、やはり美術館での企画展開催、そしてその展覧会図録の刊行のふたつでした。それが今回同時にかなったので、これほど嬉しいことはありません。
美術館での企画展は、2015年の広島・八千代の丘美術館、2017年の岡山・奈義町現代美術館についで3度目ですが、規模としては今回が最大で、50点の作を展示することができました。

自画像と初期作品

始まって2週間が過ぎましたが、来場者の反応は思った以上で、とりわけ初めて私の世界に触れた方々の反応が良く、確実に新しいファン層が開拓できつつあるという手ごたえを感じています。

今回のように、一貫したテーマで描かれた大作群を一堂に展示すると、とても大きなインパクトが見る方に伝わることがよくわかりました。

また今回は遠方ということもあり、私が会場に行ける機会が多くはないので、作品解説のパネルをところどころに掲示したところ、熱心に読まれる方が多く、この作戦は成功したようです。

また展覧会図録にも工夫を凝らしました。

参考図版を入れて資料的価値を上げたり、掲載作品を6つのチャプターに分けて配列したり、表紙も2種類にして、購入者が好みの方を選べるようにしました。
最後尾には詳しい年譜を付けましたので、私のこれまでの歩みに興味のある方には参考になると思います。

ENERGY三部作の配置

ところで今回の出品作の多くは100号以上の大作で、200号や300号の作品もあります。
それらの多くは私の所属する一陽会という公募団体展や色々なコンクールに出品した作品で、大きな会場に展示したことのある作品がほとんどです。

面白いのは同じ作品なのに、会場が変わると印象がかなり変わることです。
今回も池田20世紀美術館の会場に展示して印象が変わった作品がたくさんありました。

その一つの理由は、照明効果の違いにあります。

今回の展示では部屋は薄暗くして、スポット照明で作品を明るく見せる手法が用いられています。
一陽展の会場である国立新美術館の場合は、部屋全体をかなり明るいダウンライトで照らしているので、スポットライトは当てません。いわばフラットな照明で作品を見せているので、分かりやすい半面、特殊な効果は望めません。

今回の池田の場合、メインの壁面に5点の絵を並べ、その中心に《阿修羅》という200号の大作を置いたのですが、これが大変評判良く、「圧巻」「圧倒的」というような感想を引き出すことに成功しました。
私の絵に厳しい兄も、驚いたように「阿修羅が良かった。見違えた!」と言いました。そして「国立新美術館で見た時は、平板な印象を受けた。」と付け加えました。

メインの壁面の展示

その時私は展示における演出の重要性を痛感しました。
公募団体展ではできないことですが、個展では自分の絵に合った照明効果を選ぶことができます。
私は基本的にはダウンライトによる照明効果が好きですが、今回は自分の絵に合っているのは、スポット照明かもしれないと思うようになりました。

今回の照明効果でもう一つ気付いたことは、私の絵に本来備わっている3D効果がより強く感じられたことです。
私はそれを意識して描いているわけではありませんが、会場でしばしばそれを感じ、また見ている人も同様に感じてくれているのがわかり不思議に思いました。

ここでいう3D効果とは、画面に描かれている羊や雲や主要モチーフが浮き出して見えることです。
羊などは一匹一匹が抱えられるように感じるほどです。
これは描かれている非現実の世界に実在感を与える上で、極めて有効な効果だと思っているので、今回その効果が照明の演出によってより強く発揮されたことは、嬉しい限りです。

名画のパロディ群

もし会場に足を運ばれたなら、ぜひこれらの照明効果も楽しんでください。
そして、遠方のため来場がかなわない方は、とりあえずは私の撮った会場写真で、お楽しみください。

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pinterest
Send to LINE