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第9回「画業50年 横浜高島屋での個展」

作品の前でギャラリートーク

新年です!明けましておめでとうございます。

しかしこの原稿を書いているのは12月なので、正月気分にはなれません(笑)。

そこで今回も前回に続き「個展」の話をします。

ギャラリートーク風景

私の初個展は24歳の時です。その年の神奈川県美術展で大賞を最年少受賞したことで、急に私にスポットが当たり、神奈川県美術展の後に開かれた『神奈川県美術展大賞受賞作家展』に会期を合わせて、関内のあるギャラリーが私の初個展を企画してくれたのです。

画廊の企画個展となれば作品を売らなければなりません。

しかし手元にある小品は、いずれも想い出が絡んだ貴重なものなので、そう簡単に手放せない代物ばかりです。

その結果、わがままを言って出品作の大半を「非売」にしてしまいました。

今から思うと、自分の未熟さや世間知らずに赤面しますが、当時はどうにもならなかったのです。

これで「売るための個展」に嫌気がさして、しばらくは個展を開くことはありませんでした。

ようやくほとぼりが冷めた6年後、2回目の個展を開きました。

今度は郵便貯金ギャラリーという大きな会場を自分で借りて、6年間に描きためた大作や小品をずらっと並べました。

この個展のねらいは、それまでの反省と今後の展望を図ることでした。

言わば中間発表的なものなので、画風の統一などは最初から考えていませんでした。

ありのままの自分をさらけ出して、そこから何か新しい方向性を探ろうとしたのです。

会期中に6年間の足取りをじっくり総括できたことで、この企画はまちがいなくその後の展開に役立ちました。

その後は2~3年置きに個展を開き、岡山大学に移った2年目に第10回の記念個展を平塚画廊とTギャラリーの2箇所で開いたところ、これが大当たりで、それまでの私の個展の売り上げ記録を大幅に更新しました。

小品を中心に並べた平塚画廊の方は、ほぼ完売状態でした。

世間ではバブルがはじけて数年という頃、絵も売れなくなっていた時代です。

これをたまたま銀座の画廊巡りを終えて寄った横浜高島屋の美術スタッフが見て驚き、私をスカウトすることになったのです。

面白いのは岡山に来てから横浜高島屋との縁ができたことで、この辺りにも私の人生が計画通りではないことが現れています。

ちなみに岡山大学時代の24年間で、私は24回の個展を開きました。

毎年1回のペースですから、以前に比べて制作に割ける時間が大幅に伸びたということでしょう。

やはりたくさん描くこと、そして常に工夫すること、この二つが絵を上達させる最良の道だと実感しています。

大作の前での記念撮影は恒例

横浜高島屋での個展は現在までで11回続いています。

最初の3回は狭い方の画廊でしたが、来場者が多いので4回目からは広い方の画廊に移り、以後はその会場が私の定番となりました。

横浜高島屋の会場は絵を飾る各壁面に個性があります。

外のガラスケースと柱を入れると、全部で6つの壁面があることになります。

これらを上手く使い分けるのが展示のコツ。

私の場合は入って右の最初の壁面には風景画を、

風景画のコーナー

正面の広い壁面には羊の大作を、

大作のコーナー

次の壁面には中型作品やパロディ作などを、

最後の飾り台のある壁面には羊の小品や猫の絵などを飾ります。

羊の小品のコーナー

そして柱にはミニュアチュールを飾り、ガラスケースには非売作品をその都度のテーマに沿って並べます。

つまり壁面が変わるごとに雰囲気を変えているのです。

今回、私の絵を初めて見られた方からこんな意見がありました。

「風景画を見た後に羊の大作を見ると、同じ作家のものとは思えない。」

それに対する私の答えは以下のようなものです。

「私は宮崎駿さんのアニメが好きですが、宮崎さんもトトロのような作品を創るかと思えば、ナウシカのような作品も創るでしょう。あれと似ていますよ。表現は違いますが、根底に流れている思想は同じです。」

私のこの答、いかがでしょうか?

個展会場の入り口

ところで今回の個展のキャッチフレーズは「画業50年」でした。

画業で食べていたわけではないので、正確には「油絵を始めて50年」ですが、貴重な機会ですから今回は回顧的展示として『初めての○○作品』というコーナーを設け、外のガラスケースに以下の4点を並べました。

《初めての○○作品》のコーナー

すなわち「初めて描いた油絵作品」(F8号15歳)、「初めて写生で描いた裸婦作品」(F30号20歳)、「初めて描いた妻の肖像作品」(F3号23歳)、「初めて描いた父の肖像作品」(P10号27歳)です。

ひとつめは身近な田舎の風景を、二つ目はポーズする後姿の裸婦を、三つ目は妻の顔をダブルイメージで、四つ目は父の上半身を1時間ほどで描いたものです。

いずれも若描きの作品で、個展では初公開だったので反応が心配でしたが、おおむね好評でホッとしました。

この企画などは「油絵を始めて50年」というタイミングだからこそできた企画で、何度もやるものではありません。

そういう意味で今回多くの方々に見ていただけたのは幸いでした。

真剣に話を聴く参加者の方々

以上のような横浜高島屋での個展の雰囲気を、皆さんに少しでも味わってもらおうと、今回は8枚の会場写真を用意しました。

じっくりお楽しみください。

そして興味が出た方は、是非次回の横浜高島屋の個展にご来場ください。

ちなみに次回の会期は3年後の2022年の11月下旬に決定しました!

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