
第79回『 マイ・コレクション/ 変わったデザインのネクタイピン ~その3 銃器、乗り物、食材類~』
[戻るボタン]で元のページに戻れます。
11月になりました。
10月の前半は一陽会の季節。
展示、オープニング行事、支部長会議出席のため3泊4日で東京に行ってきました。
今年も力作が多く、みんな頑張っている印象でした。
やはり大きな会場に並べると、まだまだ自分の力不足を痛感します。
そんな私を励ましてくれるかのように、9月27日と10月12日に懐かしい教え子が総社の我が家を訪ねてくれました。
1人目は横浜国大附属横浜中学校で40年前に1年間だけ美術を教えた女性です。スポーツ好きで明るく元気の塊のような人ですが、美術も好きで油絵クラブにも入っていました。なぜか気が合い、卒業時には色紙に彼女の似顔絵を描いてあげました。彼女が結婚して自宅を新築した折には、私の絵を玄関に飾りたいという嬉しいオファーが来たので、S20号の羊の絵を描いて送りました。今回はご主人の趣味の城巡りに付き合った二人旅で、姫路城、備中松山城と見て、最後が総社の鬼の城というコースでした。我が家ではアトリエを見たり、ギャラリーを堪能したりでじっくり楽しんで帰られました。
2人目は大住中学校で47年前に3年間美術を教えた男性です。1年時には担任もしました。彼は私の美術鑑賞の授業が卒業後とても役に立ったということで、今回は瀬戸内芸術祭と我が家のギャラリー見学を目的に来てくれました。3年前の横浜髙島屋での個展で久しぶりに再会し、2年前の平塚の個展では風景画を買ってくれたりもしました。彼は頭がよく、中学校時代も成績優秀でしたが、リーダータイプではありませんでした。しかし今回じっくり話をしてみると、実にしっかりした考えを持ち、それを実践していることがよく分かり、とても頼もしく感じました。
教え子の成長をこのように感じられることは教師冥利に尽きます。ギャラリーでも展示された1点1点の絵をじっくり鑑賞してくれました。その後、笠岡の法華寺にも足を延ばしてくれ、天井画も見てくれました。この二人の来訪は私に元気をくれました。今年は5月から不思議とこういうことが続いているので、つくづく教師をやっていてよかった、鑑賞教育に力を注いでおいてよかったと思える日々です。
さてマイ・コレクションの『変わったデザインのネクタイピン』の3回目は銃器、乗り物、食材類をモチーフにしたタイピンを紹介します。
今回最初に登場するのは銃器類のタイピンですが、日本は銃社会ではないので馴染みは薄いかもしれません。そこでアメリカの西部劇でガンマンがよく使う拳銃をデザインしたタイピンから紹介しましょう。(写真1)
いかがですか。タイピンとは思えないくらいよくできているでしょう。拳銃のずっしりした重みまで伝わってくるようです。このタイピンのリアルさは外見だけでなく、何と弾を込めるリボルバーの部分がちゃんと回転することです!タイピンの機能とは全く関係ない部分ですが、制作者のこだわりが感じられて嬉しくなったものです。
二つ目はより小ぶりの拳銃です。(写真2)
これらは護身用の拳銃でしょう。上の丸みを帯びた可愛いものはおそらく女性用です。ただし可愛いのはデザインだけで、殺傷能力は低いとはいえ、至近距離から撃てば人の命を奪うこともあったはずです。もちろんタイピンの場合は純粋にデザインを楽しむ目的なので、命を奪うことはありません。でもこのタイピン結構目立つので、心を奪うことはあるかもしれません(笑)。
下のものは直線的なデザインの拳銃で、有名なコルト社製のもののようです。実物のサイズは分かりませんが、このタイピンは幅がわずか2.5㎝しかありません。とても小さいので、これが使えるニットタイは限られていますし、タイへの着脱もかなり苦労します。しかしその小ささゆえに着けて行った時は、かなり人目を惹くようです。
三つ目は殺傷能力の高い大型の銃です。(写真3)
上がマシンガンで、下がライフルです。私が子どもの頃よく見ていたテレビ番組に『コンバット』という戦争ドラマがあって、主人公のサンダース軍曹が持っていたのがマシンガン(機関銃)でした。戦争の何たるかを知らなかった時代だったので、マシンガンを打ちまくるサンダース軍曹がとにかく格好よく思えたものでした。デザイン的にも目を引くので、評判がいいタイピンのひとつです。
ライフルの方は有名なウィンチェスター・ライフルです。西部劇によく出てくる銃ですから覚えている方もいるでしょう。このタイピン、見て分かるように幅が7.5㎝もあるので、合うニットタイがなかなかありません。というわけでこれまで最も出番が少ないタイピンのひとつになっています。シャープな形状に金色の色調と目立つ要素は揃っているのに、もったいない話です。
次は銃そのものではなく、銃関連のものです。(写真4)
何だか分かりますか?
これは銃弾なのです。ウィンチェスターという文字が刻まれているので、先ほどのライフルの銃弾なのです。横長の形状ですからタイピンにふさわしく、丸みを帯びているのでニットタイを傷つけることもありません。見た目のインパクトもあるので、かなり使用頻度の高い一品です。
ここからは乗り物類です。
最初は見るからによく使ったと分かるタイピンで、メッキが剥げています。(写真5)
デザインはレーシングカーです。私はカーレースには詳しくありませんが、車種はかつてF1を制したこともあるロータス25ではないかと思われます。今まさに疾走しているロータス25を斜め正面から捉えた姿ですが、感心するのは小さな前輪と大きな後輪の距離感です。レリーフ(浮彫)としての表現力がとても的確に思われます。高い技術の裏付けがあるからこそ飽きが来ないデザインなのです。
次は二輪車です。(写真6)
上は手軽に乗れるスクーターです。スピードは出ませんが、荷物も多く収納できて便利です。ただしタイヤも小さいので、デザインとしては必ずしも格好よくはありませんが、逆にそこが魅力なのかもしれません。
下は大型バイクです。見るからにごつい印象で重そうです。白バイに使われる車種なら排気量は1300㏄にもなります。しかしこのタイピンは上のスクーターとほぼ同じ大きさです。これでは迫力が出ません。やはり現実のイメージは大事にしてほしいところです。
次は大型車両です。(写真7)
上は古いタイプの大型トラックです。スピルバーグ監督のTV映画『激突』に出てくるようなデザインの車両です。遠近法を使って立体的に表しているので、疾走感が出ています。
下は蒸気機関車です。こちらも遠近法を使って立体的に表しているので、迫力があります。機械としての重量感と生々しさがよく出ています。私の勘では前出のレーシングカーと同じ作者の手によるものではないかという気がします。
この二つとは対照的に対象を真横から捉え、平面的に表したものも紹介しましょう。(写真8)
上は機関車で、下はクラシックカーです。
前の二つが動きを感じさせる力強いデザインなのに対し、この二つには動きはなく、機械としての洗練された美しさが前面に出ています。これはどちらが優れているかという問題ではなく、それぞれに良さがあるということを分かっていただけたらと思います。もちろん好みは自由です。
皆さんはどちらがお好きですか?
次の二つは乗り物関連ですが、共に意外性に富んでいて魅力的なデザインです。(写真9)
上が飛行機のプロペラ、下が自動車のタイヤです。それぞれの乗り物の重要なパーツだけを取り出してタイピンとしてデザインする発想とセンスに脱帽です。この二つはいずれも着けた時の反応がよいので、私自身も気分が乗ってきます。特にタイヤの方は離れて見ると目玉にも見えるので、注目を引きやすいようです。
乗り物類の最後は珍しいモチーフを使ったものです。(写真10)
旅客機のシルエットを楕円形の枠の中に収めたおしゃれなデザインで、かなり人目を引きます。バーの所に「TDA」という文字が入っていますが、これはかつて日本の空を飛んでいた東亜国内航空のロゴです。JALやANAに比べるとマイナーですから、東亜国内航空のことを覚えている人は少ないと思いますが、このタイピンを着ける時に私は必ず思い出しています。
次はタイピンのモチーフとしては珍しい食材を使ったものを三つほど紹介しましょう。(写真11)
最初はこれですが、何だか分かりますか?
筍(たけのこ)です。ずっしりとした重さまで伝わってくるリアルな造りです。皮が波のように繰り返されていて、右上に上昇していく生命感も感じられます。このようなタイピンをどういう人が創っているのか分かりませんが、素晴らしい表現力だと思います。
次の二つには共通点があると思われます。(写真12)
上は玉ねぎと人参で、下は包丁と切られた人参です。包丁が加わることで動きが感じられます。皆さんはこの二つからどんな料理を想像しますか?私はカレーです。シチューの可能性もありますが、第2回の道具類で紹介したソースポットと鍋を組み合わせれば、カレーで決まりです。この4つは同じ作者の手によるものではないかという気がします。こんな楽しい想像をさせてくれる作者はきっとユーモアのある人でしょう。
さて今回の最後を飾るのはどこにも分類できない珍しいタイピンです。(写真13)
これはニューヨークの摩天楼エンパイア・ステート・ビルディングです。1931年に完成した超高層ビルで、地上443.2mという世界一の高さを誇りました。1972年にワールド・トレード・センター・ビルができるまで、何と42年間も世界一だったのです。またSF映画でキングコングが2度登ったビルとしても有名です。ところでこのタイピンには難があります。皆さんも気づかれたと思いますが、本来垂直に立っているものをタイピンとは言え横に倒して使うのには抵抗があります。建物類のタイピンが他にないのは、こんなところにも理由があるのではないでしょうか。
次回は生き物類他のタイピンを紹介します。お楽しみに!













