
第83回『 マイ・コレクション/ 動物根付の世界 その2 動物根付 ~ウシ、トラ、ウサギ ~』
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岡山にも何度か雪が降るなど寒かった2月が過ぎ、3月がやってきました。
いよいよ本格的な花粉症の季節の到来です。
今年のスギ花粉の飛散量の少ないことを祈るばかりです。
そんなことを考えていたら、花粉症の症状がついに出てきました。
13,14日と東京へ行ったのですが、春めいた陽気で(こういう時が一番花粉が飛びやすい)案の定喉をやられて、声が出にくくなってしまいました。
13日に久しぶりに展覧会や資料収集で上野公園や神保町を歩き回ったのが祟ったのかもしれません。
14日の一陽会の運営委員会は話しづらくて難儀しました。
昔もよくこの時期に東京へ行っては花粉症をこじらせましたが、久しぶりに同じ轍を踏んでしまったというわけです。
2月の大きな仕事は『陽のあたる岡・第15回記念展』のリーフレットの作成です。
これまで第5回、第10回の記念展の時に作成してきたので今回が3回目です。
それにつけても思うのは皆さんよく努力して今日まで絵の制作活動を続けてきたなということです。
「継続は力なり」と言いますが、教員をやりながらという人が多いので、その大変さは同じ道を歩いてきた私にはよく分かります。
メンバーは現在13名ですが、第10回展から2名が入れ替わっています。同じメンバーで続けるのもなかなか難しいのです。リーフレットには各メンバーの代表作2点と略歴、顔写真、制作に関するコメントが載ります。第10回から14回までのDMや15回の特別集中展示の作品の一部も紹介されます。来場者にはこのリーフレットが無料配布されますので、楽しみにご来場ください。
新しいテーマの「動物根付」も2回目を迎え、今回はウシ、トラ、ウサギを紹介します。それらの動物が根付としてどのように丸く造形されているのか、そしてあまり見ることのない底の部分がどうなっているのかをじっくり味わいながら楽しんでください。
最初はウシです。
ウシはごつごつした大きな体をしていますから、立ち姿を根付にするのは難しいように思われますが、どうでしょう。
やはり座っていました。(写真1~4)
首を後ろに曲げて「わしに何か用か?」とでも言っている感じです。小さな事にはこだわらないおおらかさが伝わってくる作品です。四肢を折り曲げて胴体に密着させ、丸くなっています。底を見ると丸くなっている様子が良く分かります。偶蹄目としての二つに割れたひずめも正確に再現されています。
次はトラです。
トラは日本にはいませんでしたから、絵画の場合は輸入されたトラの皮の敷物や「小さなトラ」と言えなくもない身近な猫を参考にした関係で、現実のトラとは異なっていたり可愛くなってしまったりということが起きました。
果たして中国製の根付ではその辺りはどうなっているのでしょうか。
一つ目はこちらを威嚇するような表情をしたトラです。(写真5~8)
しかし長い尾を丸めているせいもあって、あまり怖さは感じません。よく見るとかつて我が家で飼っていたチャゲという猫に似ていて、懐かしい気持ちになりました。
角度を変えて見てみると、柔軟なトラの体躯がよく表現されていることが分かります。
底を見ると足の裏の肉球まで正確に彫られています。
二つ目はより戦闘モードのトラです。(写真9~12)
長い尾を背中の上に持ち上げ、顔の表情もより迫力を増しています。
それにしても全長が3.5㎝程度のサイズの中で、顔というさらに小さな細部をここまでリアルに再現できる彫りの技術ってすごくないですか?角度を変えて見ても全体のバランスが良く、丸さを志向する造形に見事に収まっています。さらに底から見上げると牙までがちゃんと彫られているのが分かり感心します。
次はウサギです。
ウサギの体は全体的に丸く柔らかい印象がありますから、根付には適しているのではないでしょうか。
一つ目は首を横にひねり、体を丸めている姿です。(写真13~16)
発想は「丸ネズミ」に似ています。長い耳も四肢も体に密着させています。
頭を横にひねっていることでムーブマン(動勢)が生まれ、作品に生き生きとした印象を与えています。
ところでこのウサギには変わったところがあります。
それは普通なら底に空いている紐通しの二つの穴が底には一つだけで、もう一つは顔の横、左目の下辺りに空いていることです。この二つの穴は覗いてみると光が見えるので、ちゃんとつながっています。こんな例もあるのですね。
二つ目のウサギは躍動的です。(写真17~20)
両耳を立て、前足をかき込んで草原を疾走している感じです。
捕獲者から逃げているところでしょうか。必死さは顔の表情からも伝わってきます。
このような躍動的なポーズの彫刻は置物にはあまり見かけません。根付特有のものでしょう。
三つ目のウサギも動きが感じられる造りです。(写真21~24)
何をしているところか分かりますか?
好物の人参を食べているところです。
左前足で持った人参の先をくわえ、右前足は顔に添えています。体をひねり、頭を上に向けて、視線の先の誰かに「これホントにうまいよ!」とでも言っているような感じです。
しなやかなウサギの姿態が巧みに表現され、高い彫りの技術を示しています。
四つ目は道具との組み合わせです。(写真25~28)
このウサギが抱えているものは餅をつく時に使う臼です。
ウサギのイメージのひとつに「月で餅をついている」というものがありますから、この根付はそこから発想されたものでしょう。
しかしこのウサギは餅をついているわけではありません。餅をつく杵は抱えていますが、どうやら臼に溜まった水を飲んでいるようです。背中を丸めて水を美味しそうに飲んでいる様子が伝わってきます。餅をついた後、臼を洗うために溜めた水を飲んでいるのかもしれません。
それにしても目の表情が生きていますね。
五つ目のウサギはこれまでのものとは変わって、リアルな彫りが特色の根付です。(写真29~33)
猫のように箱座りしてじっとしている場面です。
動物と言うと動き回っている印象がありますが、実際には狩りをする時以外はじっとしていることが多いのです。無駄なエネルギーは使いたくないというところでしょう。
だから狩りをする必要のない動物園の動物たちは、たいがいのんびりとくつろいでいます。しかし穏やかなポーズだからと言って単調な造りにはなっていません。それは左右逆方向から見るとガラッと印象が変わりことで分かります。右手から見たウサギ(写真29)は穏やかですが、左手から見たウサギ(写真31)は荒々しさを秘めています。後ろから見るとウサギの体の肉付きが変化に富んでいることが分かるでしょう。(写真32)この根付、表面の毛彫りに目を奪われがちですが、肉付きからは作者のデッサン力の高さが窺えるのです。
今回はここまでですが、
最後にこれらの根付をどんなふうに保管しているのかを紹介しましょう。(写真34)
高級なお菓子の箱に自分で使った升目の仕切りを入れ、下にクッション材としてティッシュペーパーを敷いています。ひと箱に30個の根付が収まっています。時々この箱からいくつかを取り出して組み合わせ、遊んでいるのです。遊び方はいずれ紹介しましょう。次回はヒツジ、サル、イヌが登場します。お楽しみに!


































