
第88回『 マイ・コレクション/ 動物根付の世界 その7 龍②と新しい仲間たち』
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ついに猛暑がやってきましたね。
6月から7月の前半にかけては昨年ほどの猛暑にはならず助かっていましたが、梅雨明けした途端しっかりと烈夏が到来しました。今年猛暑対策のひとつとして役立っているのが、コンビニで家内が買ってくれた黒い帽子です。私は移動中、両手が荷物でふさがっているので傘が差せません。そこで帽子となったわけです。薄いペラペラのキャップですが、つばがあるので十分日除けになりますし、まぶしくないので歩きやすいのです。この帽子を使うのは貴志駅からスクールバスのバス停までと大学構内の移動の時だけですが、猛暑の炎天下ですから、だいぶダメージの軽減につながっています。また梅雨の時期の小雨対策としても役立ちました。ちなみに大学の授業は7月中に終了しているので、8月は完全に夏休みですが、前半はレポートの採点と成績付けに追われるので、働いているのと同じです。その中で現在取り組んでいる大作の完成が8月の目標です。レポートを読んでは採点し、合間に絵を描くという日々になりそうです。
さて動物根付の美術の散歩道も7回目、今回は龍の続きと新しく加わった仲間たちの紹介です。
前回は6種類の龍の根付を紹介しましたが、今回は3種類です。
そのひとつ目は頭部の表現が魅力的な一品です。(写真1~4)
前回も書きましたが龍のデザインは頭部が勝負です。逆に言えば頭部が上手く表現できれば、その造形は半分以上成功したようなものです。
この根付の頭部をよく見て下さい。ギョロリと剥いた眼に力がみなぎっています。横からの角度だと頭部の異常な大きさがよく分かるでしょう。(写真2)
後ろから見るとうねる胴体が根付の限られた空間の中で力強く表現されていて、頭部以外もおろそかにしていないことに気付きます。(写真3)
底から見ると根付として頑丈にできていることが窺え、機能性も問題ありません。
二つ目は全体のバランスがよく取れている根付です。(写真5~8)
下部に雲と思われるものを土台として付け加えているので、置いた時に安定します。裏から見るとその辺りの構造が見て取れます。(写真8)
胴体はとぐろを巻いて、尻尾の先端が跳ね上がっています。頭部と胴体と尻尾が一体化した見事な意匠です。私が気に入っているのは、胴体と頭部と尻尾の組み合わせから生まれる円形の内部空間です。(写真5)
内部空間はイギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアがよく使う手法ですが、要するに本体に穴を開けることで、周囲の空間を作品内に取り込むことができるのです。龍の長い体形は根付としては厄介ですが、内部空間を造るのには実は適しているというわけです。
三つ目は私が持っている龍の根付の中では最も高価なものです。つまりこれまで見てきた中国製のイミテーションではなく、現代の作家がこしらえた一品で、材質も象牙です。(写真9~13)
20年ほど前に銀座の根付専門店で購入しましたが、値段は確か3万8000円だったと記憶しています。ちょうど中国製根付の10倍ですね。でも現代根付では一番安い方です。だから私でも買えたのです。(笑)
この根付は長い胴体を三重に丸めているところが特徴です。顔はあまり長くはなく、鼻は龍にしては珍しい団子鼻です。顔の印象が獅子にも似ている所以でしょう。恐ろしさよりも親しみやすい印象です。
ところでこの根付、これまで見てきた中国製根付と値段ほどの差が形態の構成や彫りの技術にあるように見えますか?私は根付の専門家ではありませんから断言はできませんが、中国製根付の技術はなかなかのものだと思います。
ここまで9種類の龍の根付を見てきましたが、龍の長い体を根付にするためにそれぞれのデザインに工夫があり、異なる魅力が宿っていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
後半はコレクションに新しく加わった仲間たちの紹介です。
ひとつ目は躍動的なウサギです。(写真14~18)
ウサギはたくさん持っているのですが、ここまで大胆なポーズのものはないので、コレクションに加えることにしました。
見て下さい。後ろを振り返った首を!180度回転して真後ろを向いています。ウサギの体が柔らかいとはいえ、ここまでのポーズができるのでしょうか?ただしこれは現実的な見方で、芸術的にはこれくらいやった方が面白いことも事実です。「根付の小宇宙」だからこそ許される造形ではないでしょうか。
体全体は滑らかに作られていて、どの角度から見ても魅力的なシルエットになっています。もちろん触り心地も最高です。(笑)
二つ目は羊です。(写真19~24)
羊も立ったもの二つと座ったもの一つを持っていますが、これはこれまでになくリアルな造りだったので購入しました。特につるっとした頭部と体毛に被われた体の質感の対比が魅力的に映りました。顔の表情は何かを警戒しているのか緊張感があります。
そう言えば座りポーズですが、安心感のある箱座りではなく前足を立てて次の行動に移れる用意もしています。(写真19、20)
ところが後ろからの角度ではそんな気配はなくて、実にゆったりとした感じです。(写真22、23)
ひとつの像で角度によってこれだけ対照的な印象を与える根付は珍しいですね。底から見るとひずめの形などがよく分かって参考になります。
三つ目は二頭のクマです。(写真25~29)
クマの根付は今まで出会ったことがありませんでしたから、珍しさも手伝って購入しました。最近クマはすっかり悪者になってしまいましたが、街中に出没するのにはそれなりの理由があるわけで、元々絵本やアニメの世界ではクマは愛されキャラです。
ところでこの根付、最初に見た時は二頭のクマが仲良くダンスを踊っているのかと思いましたが、顔の表情などをよく見ると争っているようにも見えます。(写真28、29)どちらなんでしょうね。
私には判断がつきません。皆さんはどう思われますか。
四つ目は猛禽類の鳥です。(写真30~35)ワシでしょうか。
獲物を捕まえています。足元を見て下さい。小さな動物をまさに鷲掴みしています。何だか分かりますか?子ザルのようです。上から獲物を押さえつけて威嚇するワシと必死に逃げようとしてもがいている子ザルという構図です。
ワシの鋭い眼光とおびえたように視線が宙を舞う子ザルの表情の対照がこの作品のポイントでしょう。(写真32)

部分図で子ザルの様子を見てみると、思わず助けてあげたくなってしまいます。(写真33~35)
わずか数センチの根付の小宇宙でこれだけ動物たちの感情をリアルに表現できる職人の技術に改めて脱帽です。
今回はここまでです。いかがでしたか?
ところで最後の二つだけ、それまでのものと違っていたのに気付きましたか?そうです。最後の二つだけが動物の組み合わせになっていたのです。他はすべて単体でした。同じ種類の複数の動物を組み合わせたり、別種の動物を組み合わせたりすると、単体では表現できない豊かな世界が生まれます。つまり物語性がぐっと増すのです。動物根付の後半はそのような動物根付を紹介していきます。お楽しみに!
なお、その準備のために9月の美術の散歩道はお休みとさせていただきます。ご了解ください。


































