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第90回『 マイ・コレクション/ 動物根付の世界 その9 動物の組み合わせ根付・親子以外の関係編』

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11月になりました。

10月は個展の準備に追われていましたが、気候的には秋らしい天気が続き、制作にも集中できました。そんな中、10月13日に誕生日を迎えました。74歳です!運転免許証の高齢者講習も受けてきました。何人かの方からメールでお祝いのメッセージもいただき、私のことをまだ気にかけてくれる人が居ることのありがたさを痛感しました。
そこで気づいたのですが、「1013」は言うまでもなく私のラッキーナンバーですが、これを二つ足すと「2026」になります。つまり今年は私のラッキーナンバーが二つ組み合わさった年だったのです。もっと早く気付けばよかった。
2026年はあと2カ月しかありませんが、何かいいことがあったら嬉しいなと、今頃になって思う私です。

さて今回のブログはテレビドラマの話から始めます。
というのもそのドラマに私の持っているのと同じデザインの動物根付が何度も登場したからです。
そのドラマとはNHKのBSで現在放映している『大岡越前』という時代劇です。

私は以前『特命係長』や『年下の男』で好演していた高橋克典さんのファンだったので、貫禄の着いた高橋さんの演技を楽しみにして見ているわけです。そうしたら例の根付が突然出てきたのでビックリ!後で録画を再生して確認したら、何と六度も出て来ていたのです。これは物語に深く関わるからこその演出でしょう。その動物根付はネズミの夫婦が協力してヒョウタンを運んでいるもので、ヒョウタンはたくさんの種をつけるところから、子どもに恵まれるという縁起の良い象徴とされています。

おそらくこの根付は、この回の主人公であった煙草の製造と販売を生業とする誠実な夫婦の暗喩だったのでしょう。六場面に共通するのはその根付が必ず誰かの掌に乗っているのです。(写真1~6)

写真2
写真3
写真5
写真6

まさに「掌の芸術」と言われる根付の本来の姿を見た思いでした。ドラマではその根付に触れた人は善人ばかりでしたが、感動したのは場面が異なるもののどの手もとても美しかったことです。美しい手に包まれてネズミの夫婦は幸せそうでした。私には掌が絵を飾る額縁のようにも思えました。
ドラマではいずれの場面もアップで放映されましたから、演出の方も相当気合が入っている重要なシーンだったのでしょう。写真からどこまで私の思いが伝わるかは分かりませんが、皆さんも「掌の芸術」をじっくりと味わってください。
そしてもう一つ気付いたのは、ドラマは江戸時代の話ですから、出てくる根付は当然「古根付」のはずで、そこまで時代考証をしていたとすれば、私の持っている根付は「古根付」のコピーということになります。
中国の根付制作者たちが「古根付」のデザインも研究している証かもしれないと、ちょっと嬉しくなった次第です。
では私の持っている同じデザインのものを紹介しましょう。(写真7~12)

この根付、今までのものとはちょっと印象が異なるでしょう。それは色に原因があります。実はこれが根付によく使われる柘植の本来の色なのです。明るい黄土色なので軽い感じがします。
前にも書いたように私は重みのあるこげ茶色の方が好みですが、この根付に関してはこれでいいような気がします。夫婦仲良くヒョウタンを運んでいる場面の幸福感と合っているように思えるからです。この夫婦の共同作業が実に巧みに表現されています。かがんだ方のネズミがヒョウタンを肩に担ごうとしているのをもう一匹が手伝っているところでしょう。そのひょうたんの重みがこちらにも伝わってきます。2匹の動物以外のものをこのように組み合わせて自然に見せる職人技に脱帽です。

次はネズミだけの組み合わせです。(写真13~17)

この2匹はじゃれ合っているのでしょうか。片方のネズミがもう片方のネズミにもたれかかっています。兄弟なのか恋人なのか、はたまた夫婦なのか、2匹の関係ははっきりしません。確かなのは仲が良いということです。もたれかかっているネズミの尻尾をもう片方が前足で掴んでいるところなどに、作者の細やかな工夫が見られます。もたれかかっているネズミの安心感に満ちた表情が印象的ですが、その安心感は後姿の丸くなった背中からも十分に伝わってきます。

次はウサギの二人組です。(写真18~23)

この二匹はいったい何をしているのでしょう。皆さん、分かりますか?何かの上に乗って遊んでいるようにも見えます。その「何か」は底からの角度で見た時にはっきりしてきます。どうやらウサギの大好物の人参のようです。2匹の関係は分かりませんが、それぞれの視線が異なる方向を向いているので、協力して何かの作業をしているわけではなさそうです。片方のウサギが好物の人参を持っているのに気づいて、それ欲しさにもう一匹が横からちょっかいを出そうとしている場面といったところでしょうか。好物を取り合う2匹は兄弟なのかもしれません。

次もウサギの二人組です。(写真24~28)

一匹のウサギの上にもう一匹が馬乗りになっています。上のウサギはかなり肉付きがいいので、下のウサギは押しつぶされているようにも見えます。これは仲のよさゆえの「遊び」なのか、力関係による「いじめ」なのか、ちょっと見ただけでは分かりません。肝心の下のウサギの表情はというと、角度によっては苦しそうにも見えますが(写真25)、

別の角度ではそうは見えません。(写真24、26)

私たちも子どもの頃、馬乗りという遊びやあえて重い友達を背負うような遊びをやったことがあるので、これも多分遊びでしょう。それにしても上のウサギのボリューム感は後方から見るとすごいものがあります。(写真27)

次はサルの二人組です。(写真29~34)

これはどう見てもキスしているところでしょう。体つきがまだ若いので、夫婦ではなく恋人同士ではないでしょうか。キスを仕掛けたのは右のサルでしょう。(写真29)

左のサルは突然の展開に戸惑っているようにも見えます。二匹の表情はアップでも確認してみて下さい。二人のポーズは体の間にかなりの空間があるので、彫刻としては高い技術が求められそうです。逆に根付としては少し使いにくいと思われます。

最後はニワトリです。(写真35~40)

農作業などに使う竹箕(たけみ)の中につがいのニワトリが仲良く収まっています。雌の方は竹箕に残っている穀物でもついばんでいるのでしょうか。雄の方はその行為が終わるのをじっと待っている様子です。私自身も農家の出身でニワトリも飼っていましたし、竹箕も身近にありましたから、とても懐かしい気持ちにさせてくれる一品です。
竹箕といえば、公立中学校に勤めていた若い頃、運動会の教員参加種目に「まり運びリレー」というのがあって、竹箕にロープを付け、中にバレーボールを乗せて運ぶ競技がありました。走ると曳いている竹箕が揺れるので、軽いバレーボールは落ちてしまいます。落ちないようにするには腰を低くして慎重に運ぶ必要があります。身軽だった私はこの種目を得意としていましたが、恰幅の良かった後輩はこの競技に出て不運にもアキレス腱を切るという大怪我をしてしまいました。以後この競技がプログラムから消えたことは言うまでもありません。
さてこの根付、囲うような空間の中につがいのニワトリをかなりリアルに彫っているので、技術的にも高度なものが要求されます。しかしできた作品は穏やかで、材料との格闘を微塵も感じさせません。底からの角度で見ると竹箕の編み目がとてもきれいに彫られていて感動します。(写真40)

いかがでしたか?
親子以外の動物の組み合わせも実にバラエティーに富んでいることが分かっていただけたでしょうか。次回は異なる動物の組み合わせ根付の紹介です。さらに物語性が増し、興味深い作例が次々と登場します。

お楽しみに!

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