5.STATION
S100号(162.1×162.1cm)1989年
電球頭の人物から羊へと、モチーフが移行する時期に描かれた作で電球頭の人物の集大成ともいえる。この頃は電車通勤だったので、事故などによる列車の運行停止に運悪く遭遇したことが何度かある。そんな時はプラットホームが人の群れで溢れ、パニック寸前の恐怖が襲ってくる。そういう実体験がこの絵の制作動機である。プラットホームを正面から描くためには、線路に降りなければならない。この絵を見るたび、小田急線伊勢原駅でこっそり線路に侵入し急いでスケッチを取ったスリリングな記憶がよみがえってくる。また群像とプラットホーム、二股外灯と信号機で、昆虫の頭のイメージを作ったりしてもいる。ここで使った群れとしての表現が、そのまま羊のいる世界へと繋がっていったのかもしれない。この絵を描いた頃は、一陽会に出し始めて八年目、一番苦しい時であったが、自信作だったので後に『金山平三賞記念美術展』にも出品した。
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