
第85回『 マイ・コレクション/ 動物根付の世界 その4 動物根付 ~トリ、イノシシ、カエル、コイ
~』
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風薫る5月、若葉の萌える5月です。
以前は5月と言えばカラッとした気候で、花粉症もGW明けには落ち着くので1年で一番いい季節だったのですが、近年は5月でも気温が25度以上の夏日が珍しくなく、30度以上の真夏日もあったりするので初夏の感じです。
そんな中、いよいよ12日(火)からは『陽のあたる岡・第15回記念展』が天神山文化プラザの第3、第4展示室を会場に始まります。会期は17日(日)までの6日間で、今回の主役は「風船の画家」として知られる妹尾佑介君です彼の特別集中展示が第4展示室で開かれ、風船以外のユニークな作品も多数見られますのでぜひお楽しみください。
15回記念のリーフレットも完成し、来場者への配布を待つばかりです。今回も制作には小林華衣さんのお力を借りました。記念展に向けた私からのメッセージと10回展から14回展までの歩み、今回の特別集中展示の紹介、出品メンバー全員のプロフィールとコメント、出品作が載っている豪華版です。
16日(土)の午後3時からは、会場において本部から二人の講師を招いて作品講評会も行います。来場者のギャラリー参加も可能です。
さて4月の報告が二つあります。
ひとつは大阪芸大大学院の研究紀要に『誌上ギャラリー』として私の作品が大々的に特集されたのを受けて、抜き刷りを作成しました。フルカラーの28ページからなる冊子で、13項目で私の作品紹介をしています。これを11月に横浜髙島屋で開かれる同所で13回目となる個展の来場者プレゼントにしようと考えています。この冊子は私が大阪芸大の教授だったという証明でもあり、退職前に発刊できたことを嬉しく思っています。
もうひとつは18日と25日の土曜日に、放送大学岡山校の面接授業を行ったことです。放送大学の面接授業には20年くらい関わっていますから、ライフワークのようなものです。『美術散歩・名画から絵本まで』という総合タイトルの元、毎回テーマが変わりますが、今回は『バロック絵画』を取り上げました。2日間、計8コマの授業で取り上げた画家は、カラヴァッジョ、ラ・トゥール、ベラスケス、ルーベンス、レンブラント、フェルメール、ロイスダール、サーンレダムの8人で、最後は例によって絵本で締めくくりました。「バロック絵画的絵本世界への招待」と題して、センダックとシゲリカツヒコを取り上げました。今回も受講生の方々の授業への意欲的な参加に助けられ、充実した時間を過ごすことができました。
さて、本題の動物根付の紹介も4回目となりました。
今回はトリ、イノシシ、カエル、コイが登場します。
最初はトリですが、トリには大きな羽根が付いているので、作者がどのようにして根付にふさわしい形にしたのかが鑑賞のポイントです。
一つ目は立ち姿の雄鶏(おんどり)です。
立派な尾羽根を思い切り立てて、周囲に誇示している感じです。(写真1~4)
体を支えている両足は太く、しっかりと造形されています。一方、嘴は欠けないように短くなっていて目立ちません。とさかも立派ですが、やはり作者は尾羽根の造形に力を注いでいる感じです。それが良く分かるのが寝かせた状態の写真です。尾羽根の重なりが見事に表現されているでしょう。しかしこの根付は使いやすさの点で疑問が残ります。
二つ目は雌鶏(めんどり)でしょうか。
座った姿で首を180度回転させて後ろに向けています。(写真5~8)
全体に丸みを意識しているのが良く分かります。きりっとした顔の表情や丸められた尾羽根の美しさなど見どころが多い作品ですが、皆さんに見てもらいたいのは丸められた尾羽根の先端が体にくっついているところです、おそらく作者はこの根付でこれをやりたかったのではないでしょうか。ギリギリの状態でくっついていることが、底からの写真を見ると良く分かります。この工夫は魅力的ですが、根付として使うとなると欠けそうな気がして心配な部分でもあります。
三つ目は雄鶏の優美な立ち姿です。
長い尾羽根を下に垂らし、地面に着けています。(写真9~12)
後ろを振り返っているので、体全体にS字形のうねりが生まれ、それがこの根付に優雅さや生命感を与えています。同じ立ち姿でも一つ目の根付と比べると、彫刻としての魅力が格段に上がっていることが分かるでしょう。さらに根付としての使用にも十分耐えられる造形にもなっています。
四つ目はトリの根付としては究極のデザインと言える一品です。(写真13~16)
羽根のあるトリをここまで丸くするのかという驚きがあります。ほぼ突出した部分がないので欠ける心配もなく、根付としては安心して使えます。それにしてもこのデフォルメはすごいですね。頭部と尾羽以外はどこへ行っちゃったの?という感じです。普通の彫刻では生まれるはずのない造形物が生まれるところが根付の面白さではないでしょうか。
次はイノシシです。
近年は各地に出没して世間を騒がせていますが、根付のイノシシはかわいいものです。(写真17~21)

私のお勧めは正面から見た角度です。上を向いた鼻が何ともチャーミングでしょう。また後ろからの角度も動勢がよく分かって魅力的ですし、丸めた尻尾も見どころです。一方下から見た角度では妙にリアリティがあって、生々しさを感じます。イノシシは元々頭部が大きいので、頭部をデフォルメしたデザインが多い根付には適している素材と言えますが、その割にはイノシシの根付に出会う機会は少なく、私が持っているのもこれ一つだけです。
次はカエルです。
体中にいぼがあるので、種類はガマガエルと思われます。(写真22~25)
カエルは大きな生き物ではありませんが、このように単体で見ると貫禄十分です。表情は「俺に何か文句あるか」と言っているかのように挑戦的です。目が生きていますね。根付として見ても突出した部分がないので、ほぼ完璧です。カエルは「無事帰る」や「お金が還る」などのごろ合わせから、縁起物としても愛されていたようです。
今回の最期を飾るのはコイです。
5月ですからね(笑)。
二つ紹介します。
コイも「鯉の滝登り」や「登竜門」などの故事から男の子の成長や出世を願う親心の象徴として、昔から縁起の良いものとして位置づけられています。私は広重の描いた『名所江戸百景』の中の《水道橋駿河台》という大空を舞う鯉のぼりの浮世絵が大好きですが、根付となると丸くしなければいけないので、ちょっと違うイメージになるようです。(写真26~29)
最初にこの根付を見た時はナマズかと思いましたが、体に鱗があるのでコイと気づきました。しかし髭はコイにしては長すぎますし、頭部はナマズで体はコイという不思議な生き物に見えます。全体のフォルムも丸さに特化していてコイらしい伸びやかさはありません。ただ根付として見た場合は顔や体にユーモラスな魅力があるので買ったわけです。
もう一つの方は髭も短く、頭部もそれほど丸くないので、これはコイと分かります。(写真30~34)
底からの角度で見ると、下顎についている2本の髭もちゃんと彫られています。ところでこの根付は今までのものに比べると色が黒いと思いませんか?実はこの根付、材質が柘植ではなく黒檀なので色が黒く、かなり硬いのです。当然欠けにくいので値段も上がります。この当時よく買っていた柘植の根付は3500円程度でしたが、このコイは5000円しました。貴重な一品なので私のお気に入り根付のひとつです。
さて今回はここまでです。
次回は獅子や麒麟といった空想上の動物たちとちょっと毛色の変わった動物?を紹介します。
お楽しみに!

































