
第77回『 マイ・コレクション/変わったデザインのネクタイピン ~その1 道具類~』
[戻るボタン]で元のページに戻れます。
9月になりました。
猛暑は相変わらずですが、今年も残すところあと4ヶ月です。
私はと言えば大量のレポートの採点と成績付けを何とか終わらせ、県展出品作の搬入と審査も済んでちょっと一息ついているところです。
しかし後期の授業が1か月後には始まるので、そろそろその準備にもかからないといけません。
大学勤めでも案外夏休みは忙しいのです。
お盆明けの8月19日には神奈川県まで遠征し、93歳になった先輩教員のU先生宅を家内と訪れました。
U先生は私のエッセー集にも登場したユニークな方で、人生の大恩人です。
U先生無しでは私の教員生活は成功しなかったと思います。
そのU先生が6月に最愛の奥様を亡くされ、気落ちされておられたので、二人で励ましに行ったのです。
U先生は思っていたよりお元気そうで、久しぶりの私たちとの再会をとても喜んで下さり、しばし大住中学校時代の懐かしい思い出話に花が咲きました。
猛暑の中、はるばる行った甲斐がありました。
さてマイ・コレクションのテーマが今月から変わりました。
新しいテーマは『変わったデザインのネクタイピン』です。
これは一時期私の代名詞にもなっていたくらい有名なコレクションです。
岡山大学時代には『美術鑑賞』の授業の課題の一つがこの「マイ・コレクション」で、そのプレゼン例として私のタイピン・コレクションを紹介していました。
タイピンの収集活動は10年くらい前に一応終了しましたが、今でもよい出会いがあれば買うことはあります。
ところでこのネクタイピンですが、残念なことにだいぶ前から絶滅危惧種のような状態になっています。
そもそも2005年のクールビズの開始以来、ネクタイをしている人は激減していますし、
ネクタイをしている人でもネクタイピンを着けている人は本当に稀です。
そもそもネクタイピンは貴重な男性用アクセサリーのひとつで、ネクタイがだらしなく垂れないようにする必要アイテムだったはずですが、何故廃れてしまったのでしょう。
実は私は社会人になるまで背広とネクタイを持っていませんでした。
教育実習もブレザーにノーネクタイで通しました。
それが教員になったのでネクタイが必要な状況が生まれたのです。
当時かなり細身だった私には普通のネクタイは似合わなかったので、偶然見つけたニットタイに活路を見出しました。
そのニットタイは斬新なデザインのものが多いので、普通のタイピンは合いません。
私は人生においてはもちろん、絵の制作や美術教育においても「ユーモアやウィット」を大事にしていますが、その感性にピッタリ来たのが「変わったデザインのネクタイピン」だったというわけです。
それから収集が始まったわけですが、集中して集められるようになったのは勤務が横浜に変わってからです。
横浜駅にジョイナスという駅ビルができ、そのビルの4階になんと「変わったデザインのネクタイピン」を専門に扱う店ができたのです。嬉しかったですね。
それまでは苦労して探してやっと見つけていたのが、欲しいものがたくさん並んでいるのですから。
仕事帰りに毎日のように通いました。
眺めているだけでも楽しいのですが、お気に入りを他の人が買ってしまうのではないかと心配し、思い切って複数個買ってしまうこともありました。
何故変わったデザインのネクタイピンをたくさん集めるようになったのかというと、
毎日変えると気分も変わるし、生徒や同僚とのコミュニケーションのきっかけにもなるからです。
ある教え子は私のネクタイピンを毎日チェックして記録していました。
私のタイピン・コレクションには以下の6つの条件があります。
1.具体的な図柄であること
2.洗練されたデザインであること
3.リアルな再現性があること
4.ユーモアやウィットに富んだデザインであること
5.原則としてバー(横棒)が見えないこと
6.あまり高価でないこと(千円から5千円程度)です。
これらの条件をすべて満たすのはかなり大変ですが、
少しでも良いものを手に入れようとしている内に、コレクションというものは徐々に質が上がっていくものなのです。
こうして集めた貴重なコレクションをこれから順次紹介していきますが、
分類して一番多かったのは「道具類」です。
「道具類」全体に共通するのは、ユーモア、ウィットよりもリアルな再現性を重視したデザインが多いことです。
まずはその辺りからじっくり見ていきましょう。
最初は「道具類」の中で最も使用頻度の高いタイピンを紹介します。(写真1)
見ての通り普通のハンガーです。
しかしタイピンとしての意外性があるため注目をひきます。
このタイピンは形状がシンプルかつ明快なので、少し離れた位置からでもハンガーと認識できます。
知り合いで気づいた人はほとんどが興味を持ってそばに寄ってきます。
そして「これ珍しいね」とか「洒落ているね」とか言ってくれます。
ですから人前に出る機会に使いたくなる一品なのです。
このように「変わったデザインのタイピン」をしていることが、私の場合個性の主張にもなっているのです。
道具類と言えば典型的なものを二つ紹介しましょう。(写真2)
二つとも強力なのこぎりです。
上は金切りのこぎりで、下はおそらく大木を切るのこぎりです。
普通の家庭にはあまりない代物ですが、デザインのインパクトはかなりあり、
遠くからでも目立ちますので、太めのニットタイがお似合いです。
次の工具は何だか分かりますか?(写真3)
上はペンチの一種のプライヤーで、下はボルトやナットを締めるモンキーレンチです。
どちらも機能性を重視したデザインですが、それぞれに美しさがあります。
そのデザイン性がより高いのが、次の二つです。(写真4)
皆さんはこれらが何だか分かりますか?
上は物の長さや深さを測定するノギスで、
下は製図や測図などに使用する分割器のディバイダです。
どちらも日常生活で使うものではないので、これらの名前や用途が言える人は少ないと思います。
特に下は似た形状から「コンパスですか?」とよく言われます。
その点、次の二つは誰もが良く知っているものです。(写真5)
上は美容師さんが使う髪切り用ハサミで、下は一般的な眼鏡です。
この二つではハサミの評判がいいですね。
スッキリした機能美が感じられるので、このタイピンには細かい編みの細めのニットタイがお勧めです。
ちなみに指を入れる所は「メガネハンドル」と言うそうです。
確かにメガネに似ていますね。
次の二つもお馴染みの道具類です。(写真6)
上がドライバーで下がナイフです。
二つとも出来栄えがとてもリアルでしょう。
小さなタイピンなのにこのリアルさは制作者のこだわりが感じられて嬉しいですね。
こういうタイピンを見ると、どんな細部でも手を抜かないで細密描写と質感描写を追求する
ヤン・ヴァン・エイクの職人技が思い出されます。
次に紹介するのはカギ2種です。(写真7)
最近はカードキーが主流になりつつあり、ドアなどのカギ穴に差し込んで回すカギは少なくなりました。
私はカギのデザインが好きなので、残念でなりません。
スマホのように何でもできる機会が登場してから、
道具類や機器類から固有のデザインが失われて行くのは忍び難いものがあります。
上は頭に装飾が施されたキーで、
下はえらくクラシックな重々しいデザインの鍵です。
皆さんはどちらが好みですか?
次はスポーツ用具です。(写真8)
二つともテニスラケットで、デザインも似ていますが大きさが違います。
上の小さめの方は細いニットタイ用に購入したものです。
私はテニスはやりませんが、天気の良い日で快活な気分の時に着けたりします。
ラケットの楕円形の部分が太陽光に反射するのを楽しんでいます。
次はベルトとゴルフクラブです。(写真9)
この二つ、何となく相性が良さそうなので並べてみました。
ゴルフに出かける日のお父さんのファッションを思い浮かべたのかもしれません。
このベルトもリアルな造りでしょう。
ゴルフクラブはパターとドライバーの組み合わせです。
ちなみにゴルフは高校生の時にキャディをやっただけです(笑)。
次は万年筆です。(写真10)
万年筆も絶滅危惧種のひとつです。
昔は高校入学のお祝いにもらったりしたものですが、そんな風習もなくなりました。
文豪が万年筆で原稿用紙に小説を書いていたのもはるか昔の話です。
それなのに私は3本も持っています。
ただしタイピンですが(笑)。
どれも太めのクラシックなデザインですが、ネクタイの色に合わせて使い分けています。
皆さんはどれがお好きですか?
次も3本セットです。(写真11)
今度は雨傘ですから、当然雨模様の日に着けます。
上は閉じた状態をリアルに再現したもの、
中はデザイン性が高いオシャレなもの、
下は開きかけのものです。
私的には真ん中の青い傘が特に気に入っています。
どれも雨の日に着けていれば、反応が返ってくる確率が高い一品です。
もうひとつ3点セットです。今度は靴です。(写真12)
上はスニーカー、中は革靴、下はブーツです。
購入したのもこの順で、やはり最初に出会ったスニーカーに一番愛着があります。
スニーカーはサイズ的には小さいので、やはり細めのニットタイがお似合いです。
難しいのはブーツで、デザインが横になっているので、着けた時に少し違和感があります。
皆さん。「変わったデザインのネクタイピン」いかがだったでしょうか?
1回目はこれくらいにして、次回はこの続きから始めます。
しばらくお付き合いください。












